「…今の話を聞いても、別れる気はないの?」



ゆっくりと、また重なった視線。


上野くんの瞳が揺らいだ気がした。



「…あたしは、だいちゃんを信じてる」



だって、好きなんだもん。


それに、上野くんの話が本当だとは限らない。


親戚のお姉さんかもしれない。


" 勝呂美和 "は親戚の人なのかもしれない。



可能性なんて、低いかもしれないけど。でも、ちっぽけでも希望があるなら、あたしはそれにすがりたい。


ーーすがっていたいの。




「…やっぱり、バカだ」



上野くんが、髪をグシャリとにぎって。


鋭い視線があたしに突き刺さる。



「……なんで、」



ひとり言のようになにかを呟いた上野くんは、あたしを気にもせず、足早に帰っていった。