傘を持ちながらだと、どうもバランスがとれない。
泥水につかったローファーを拾い上げるのもひと苦労だ。
「…はやく、会いたいなあ」
濡れたローファーを履くと靴下も濡れて、足にはりつく靴下の感触が気持ち悪くて。
新しいローファーだから靴下に染みる心配もない!なんて浮かれていたのが嘘みたいに、気分はずーんと沈んでいた。
せっかく会えるのに、汚いカッコ。
歩くときに跳ねた泥がふくらはぎに飛び散ってるし。こんなになるんだったら、やっぱりいつもの道通ればよかった。
田んぼ道を選んだ過去の自分を恨みながら、はあ、と大きくため息をついた。