「夏葉(なつは)…。
何なの。その髪…」
「金髪、似合うでしょ?
こんなに似合うなら早く染めれば良かったな…」
「戻しなさい!!」
「何で? 似合ってるでしょ?」
「早く戻しなさい!!」
「お母さん…」
「あなたはお母さんを困らせたいの?
お父さんが帰る前に戻してきなさい」
「お母さん…」
「戻すまで家には入れませんから」
バタン。
「お母さん…」
ガチャッ。
「君。夜の11時過ぎてるよ。
早く家に帰りなさい」
「家に帰れません…」
「帰れないか…。
なら…高校に来い」
「えっ?」
「今、丁度バレー部が高校で夏合宿してるんだよ」
「へぇ…」
「マネージャーが1人止めてな。人手が足りなくて困ってたんだ。だから、その手伝いをして欲しい」
「面倒くさ…」
「手伝ってくれたら夏合宿の2週間。食事も寝る所も提供するぞ」
「…本当に?」
「ああ…」
「分かりました…。やります」
「そうか。キツイと思うが、頑張ってくれ」
「はい…」
「金髪か…」
「はい…。夏休みの間だけ良いかなと思って…。
この髪じゃヤバイですか?」
「いや…夏休みの間だけなんだよな?」
「はい…」
「なら、いい…。
それにしても…
金髪似合うな。お前」
この時に私は彼に恋をしたんだと思う。
そして、私は願った。
『女として見てくれますように』
でも…
「涼家(すずいえ)先生。私と付き合ってください」
「いつも言ってるだろ。付き合えないって」
「ですよね? 先生結婚してますもんね」
「うん。知ってるよな?」
「えっ。涼家先生って結婚してるの?」
「ああ」
「知らなかった」
「子供も居るんだって」
「今年で3歳だ」
叶わなかったけど…
「どこに行くんだ?
夜の11時過ぎてるぞ」
「どこでも良いじゃないですか…」
「金髪を戻せば家に戻れるんだろ?」
「親に会ったんですか?」
「早く戻して、家に帰れ…」
「戻さない…」
「金髪は夏休みの間って言わなかったか?」
「そのつもりだったけど、気が変わったんです…」
「このままだと退学にされるぞ」
「涼家先生には関係ない…」
「関係あるだろ! 
お前は俺の大事な生徒だ!!!」
心配させてでも…
「褒めてくれたから、戻したくないよ…」
探して欲しい。