「爽佑(そうすけ)先輩。
好きです。付き合ってください」
「ごめん…」
「理由は何ですか?」
「えっ…」
「フラれた理由を知りたいんです。
教えてもらえませんか?」
「言っても…いいのか?」
「はい。是非。お願いします」
「理由は…」
「はい」
「女に見えない」
「女に…見えない…」
「ああ。見た目や性格が完全男だ。
悪いが俺は女が好きなんだよ」
「そうですか…」
「どこが、男だよ」
「何だ? お前…」
「どう見てもこの子女でしょ。
爽佑先輩。目、悪いんじゃないですか?」
「はっ? お前の方こそ目が悪いんじゃないのか?
こいつのどこが…」
「可愛い女の子じゃん。
そう思うよな? 空羽(くう)」
「うん。
可愛い」
「ほら、やっぱり爽佑先輩の目が悪いんですよ」
「何だとー。お前ら、何年何組だ!!」
この時に私は彼に恋をしたんだと思う。
そして、私は願った。
『女の私を好きになってくれますように』
でも…
「校庭裏なんか呼び出して、どうしたの?」
「大事な話があって…」
「大事な…話?」
「ああ…。
夏堂十夏(なつどう とおか)」
「はい」
「俺……
空羽が好きだ」
私の願いは叶わなかった…。
「夏祭り、楽しみだね。今年、浴衣来て行こうかな…」
「なあ、十夏…」
「うん?」
「俺、空羽と2人で行きたいな」
「そっか。分かった」
「十夏ごめんな…」
「謝らなくていいよ。
2人で楽しんで来てよ」
叶わなかったけど…
「十夏」
「空羽、扇(せん)」
「夏祭り2人で行かないか?」
「…えっ?」
「俺と行ってくれるよな?」
「ごめん…。その日は用事があって行けないんだ…」
「どんな用事だよ」
「ごめん…」
「何だよ。行きたかったのに…」
「行けばいいじゃん。扇と2人で」
「扇と?
嫌だよ。何で男2人だけで夏祭りに行かなきゃ行けないんだよ。
なあ。どうしても行けないのか?」
「…分かった。行くよ」
「本当か?」
「うん。用事は他の日にする」
「よっしゃああ!!」
「でも、3人でね」
「3人」
「うん。私と、空羽と、扇の3人で行くからね」
「何でだよ!!」
「3人じゃないなら私行かないから」
「分かったよ。3人。3人で行こう!」
「扇…」
「ありがとう…。
十夏…」
悲しませてでも…
「扇…。浴衣可愛いって言ってくれるかな?」
側に居たい…。