「おい、絵莉夏(えりか)。
家の前に座ってどうしたんだ?」
「風生(かぜき)…。
おばさんが来てて…」
「前に来てたお化けみたいなおばさんか?」
「ううん…。そのおばさんとは違う…。キツイにおいのおばさん…。
だから、家に入れないんだ…」
「なら、いつもみたいに俺んちに来ればいいだろ?」
「うん…」
「絵莉夏。
俺んちに来るの…。イヤか?」
「ううん…。そうじゃなくて…。
男の人って皆こうなのかなって…」
「そうだな…。俺の所は父親が居ないから分からないけど…。
俺は違うぞ。

絵莉夏以外の女を家に入れた事ないからな」
「風生のお母さん…」
「お母さん以外の女では絵莉夏だけなんだよ。
だから、男は皆そうじゃない」
「うん…」
この時に私は彼に恋をしたんだと思う。
そして、私は願った。
『彼の女は私だけでありますように…』
でも…
「ねぇ、風生、今日家に止めてくれない?」
「えっ? 家…?」
「うん。親とケンカしちゃってー。今家出中なんだけど、今日泊まる所なくてさー」
「そんな急に言われてもな…」
「お願い!! 迷惑かけないからさ!!!」
「…分かった…」
「本当!!
ありがとう!! 風生!!!」
私の願いは叶わなかった…。
「梨花(りんか)聞いたよ!!」
「昨日、風生くんちに泊まったんだって?」
「まあ…ね…」
「で? 寝たの?」
「寝たの?」
「それは…想像にお任せしまーす」
「あーその反応はしたなー」
「さあ?」
「泊まったんだから、寝てるでしょ?」
「寝たけど?」
「えっ?」
「私、風生の家に泊まった事あるの」
叶わなかったけど…
「おい! 待て…」
「…何?
私に用?」
「寝たって…何だ?」
「…はっ?」
「梨花に言っただろ?
寝たって…」
「ああ…。言ったよ」
「何でそんな事!」
「泊まって寝たじゃん。あっ…。
小学生の時って…言い忘れたね」
「ふざけるな…。
もう二度と梨花に近づくな…」
怒らせてでも…
「話したの…。
1年ぶりだ…」
あなたに会いたい…。