「あーオニーサンが女の子つかまえてるー。」

「ほんとだー。ケーサツ呼ぼうぜ。」

たまたま通りかかったっぽい人達がそう言った瞬間、息が楽になった。

「逃げたぞ!!悠汰(ゆうだい)!」

「追いかけますよっと!!」

待ておらー!!と言いながら悠汰と呼ばれてる人は追いかけに行った。

「…大丈夫ですか?」

そう聞かれた瞬間力が抜けてその場に座る。

「ありがとう…ございました…。」

見覚えのあるユニフォームを着た同い年位の男子は自分のカバンを肩にかけ直しながら話しだす。

「あの人、この辺じゃ有名な変質者なんですよ。大体この辺りで制服の女子に声かけるんですよ。」

「へぇ…そうなんだ…。」

話を聞きながら立ち上がろうとするけど上手く力が入らない。

「あ…良かったら送って行きましょうか?あ…でも知らない人だから怖いか…。あ…でも1人で帰る方が怖いのか…?」

自問自答をする姿がなんだか面白くってつい笑ってしまった。


「君さ、稲総との練習試合だと絶対に来るよね。友達の付き添いって感じで。」

「よく知ってますね。」

「まぁ大体ベンチにいるし。友達の声の声よく聞こえるし。君は全く野球に興味なさそうだしね。」

そう言われてやっと誰か思い出した。今日最後流星くんにヒット打たれた人だ。

「名前…。なんて言うんですか?私、藤本佳乃(ふじもとかの)って言います。」

「あ!水原疾風(みずはらはやて)です。」

水原くんか…。へぇ…。

そう思いながら立ち上がろうとするけど全然力が入らない。

自分でも気づかない内にトラウマになってたらしい。

1人でも帰るのは少し怖いから水原くんに送ってもらうことにした。