「お待たせしました。枝豆と、たこわさび、焼き鳥の五種盛りです」

西宮さんオススメのお店に入り、四人掛けのテーブルに案内された私達は向かい合って腰をかけていた。

注文していた商品がテーブルに並ぶと、私はビールジョッキのグラスに無意味に触れながら口を開いた。


「……どうして、私なんですか」

ぼそり、と独り言のように呟く。私の一言に西宮さんは目を丸くした。

「どういうこと?」

「どうして、あんな風に周りに勘違いされるような事言ったり、こうしてご飯に誘ってくれたりするんですか? だって、私じゃなくてもいいですよね? 西宮さんモテるんだし、他の女の子でもいいじゃないですか」

取り乱さないよう、あくまでも冷静に言い放った私。そんな私の言葉が意外だったのか、一瞬驚いたような顔をした後、西宮さんは「うーん」と声を漏らして考え始める。

「まず、一つ言わせてもらうと、麻美ちゃんじゃなくていい、ってことは無いよ。俺は、麻美ちゃんじゃないとダメだし嫌だ。麻美ちゃん以外ならいらないってくらい惹かれてるから」

想像しなかった言葉に、今までにないくらい心臓が大きく脈を打った。

「あと、モテるって言っても、俺の〝副社長〟っていう肩書きが欲しいとか、ルックスだけ見てるとか、そういう子結構多いから。実際、俺がこうやって居酒屋とかに連れて行くとガッカリする女の子多いしね。まあ、そんなことは置いといても、人間って、終われると逃げたくなる生き物でしょ? だから、追ってくる女の子が嫌だってのもあるかな」