見覚えのある腕組みの仕草に、聞き覚えのある台詞。それから、話し方。

 初めは、彼は一体何をし出したのかと驚いたけれど、きっと……いや、間違いなく彼は社長の真似をしているに違いない。

 確かに社長は、面接の一番最後に〝この会社に自分を売り込んでみてくれたまえ〟と言っていた。だとしたら、次は。


「私がこの会社に迎え入れてもらえたとしても、目に見えるような変化もプラスもないかもしれません。私には、そんな力はまるでないです。だけど、この会社に、地道に、長く貢献することができると思っています。この通り、アラサーだというのに結婚の見込みは全くないので、入社早々寿退社、なんてことは絶対に無いと言えます。なので、私をこの会社に迎え入れてくださった暁には、全力で長いお付き合いをさせていただきたいと思っています!」


 ………やっぱり。

 身振り手振りを入れ、いつもより少し高めの声で、恐らく私のことを真似ている西宮さん。

 彼の放ったこの言葉は、私が面接の時に社長の最後の質問へ返した回答。

 学力は人並み。人柄の良さも、誰にも負けないと思える何かを持っているわけでもなんでもない。そんな私が会社に売り込めること。許された時間の中で考え、思いついたのがその答えだった。