私が発したい言葉を並べ終わった後、しばらく西宮さんからの返答がなかった。

 あ、ひょっとして私、また余計なことでも言ってしまっただろうか。

 恐る恐る顔を上げて西宮さんの表情を覗く。すると、西宮さんはぼうっと丸い目をこちらに向けていた。


「な、何ですか?」

 あまりにもじっとこちらを見つめる西宮さんにそう問いかける。すると、彼は瞼を下ろして一度私から視線を外した。


「あー、麻美ちゃん好きだわ」

「はっ⁉︎」

「もっと早く麻美ちゃんに会いたかったって、既に後悔してる」

 ダメだ。ダメだ。彼の言葉を鵜呑みにしてはいけない。ポーカーフェイスを保つんだ、私。

 何度となく自分にそう言い聞かせるけれど、彼が放った〝麻美ちゃん好きだわ〟という言葉の真意が読めるようで読めなくて、どうも気になって仕方がない。気にしないようにと思えば思うほど、私は彼の言葉に惑わされて抜け出せなくなる。

「何言ってるんですか。大袈裟です。大体、私と西宮さんが会ったのは昨日ですよ? 出会って2日で他人の事なんか分からないじゃないですか」

 冷静に、冷静に、と言い聞かせながら、低いトーンでそう言うけれど、本当は心臓の脈はいつもより早く打っているし、変な冷や汗までかいてしまいそうなくらいだ。