「はは、福があるにもほどがある、か。とんでもない褒め言葉で嬉しいけどさ、断トツだったのは外見だけなんだ?」

 西宮さんがクスクスと肩を揺らしながら笑っている。どうやら〝外見は断トツでしたよ〟という私の言葉がツボにはまったらしい。

「だって、今日初めて話したんですよ? 中身は知らないですから」

「まあ、それもそうだね。でもさ」

 私の言葉に納得したのか一度は首を縦に振った彼が、言葉を続ける。私は、返事をする代わりに目の前のグラスへと外していた視線をもう一度西宮さんに戻した。すると。

「これから、中身も断トツだったって思うかもしれないじゃん」

 そうでしょ? と、目の前の彼は自信満々に口角を上げた。

「えっと……」

「だからさ、たくさん知っていってよ。俺のことを」

「えっ?」


 真っ直ぐ見つめられると、特別な感情を抱いていなくたって胸が勝手に高鳴ってしまうくらい整った顔立ちの西宮さん。

 私は、そんな彼に誤作動を起こしたように跳ね続ける心臓の鼓動が早く治ることをただただ祈る。

 そんな私の気なんて知るはずもない彼は、もう一度口角をぎゅっとあげると「これからもよろしくね」なんて言って呑気に笑っていた。