私の返答に、一瞬静まり返るリビング。

まさか、私、答えてはいけないことを答えてしまったんじゃ……と思ったその時、一斉に笑い声がリビングに響き始めた。

「ふふふ、まさか、そんな答えが返ってくるなんて思わなかったわ」

私の返答を気に入ってくれたのか何なのか、さっきまでとは一変、朗らかな笑顔になったショートヘアのお姉さん。

「本当、純奈(じゅんな)の言う通り。予想外すぎる答えで驚いた」

続いて、樹里さんもそう言って笑った。


「私、お高い料理屋さんの料理も好きですけど、店内の雰囲気が落ち着かないのと、この通り平凡な庶民なので、居酒屋とかの味を食べるのが安心するんですよね。だから、庶民的なリーズナブルなお店に連れて行ってくれるところが好きです。私達平社員にもフレンドリーに接してくれて、仕事も気を抜かことなく頑張ってて、そういうところも親近感が持てます」

社長の息子。御曹司で、次期社長である西宮さん。そんな彼に勝手な偏見を抱いていた私だったけれど、他の人と何も変わらない。いつも同じ目線に立ってくれている彼だから、私はこんなにも彼と一緒にいることを望んでいるのかもしれない。

そんなことを考えていると、樹里さんがゆっくり口を開いた。


「あの子、一度だけうちに彼女を連れて来たことがあるの。今回みたいに結婚の挨拶ではなくて、本当にただ紹介をしにきてくれただけなんだけどね。幸人が真剣にその子と付き合ってるっていうのは私達から見ても分かった。だけど」