「ありがとう、マサ。こんな私を好きになってくれて」

 マサの反応がないのを慎重に確認し、アオイは彼の唇にそっとキスをした。

「でも、その気持ちには答えてあげられない。だから、これで許してね」

 アオイの言葉はマサの耳には何一つ届いていなかった。眠っていたのだから当然だ。それなのに、唇に触れた彼女の感触だけははっきりと彼の記憶に刻まれた。

 柔らかくて、甘い香り。そして、名残惜しく離れていく。切ない雰囲気に胸を染められていく。

「…………」

 唇を交わして五秒後、マサは目を覚ました。アオイはもうそばにいなかった。ベッドの隅に彼女はいた。マサに背を向ける格好で、彼女は横向きに寝そべっている。