マサの恋の相手を知った時、アオイが覚えたのは素直な祝福心ではなく嫉妬だった。そんな自分にわけがわからなくなり、気が動転した。仁のことを愛しているはずなのになぜ。やはりマサに特別な感情が芽生え始めてきたのだろうか。だとしたら、早めにその芽は摘み取ってなかったことにしなければならない。ゆえに過剰なまでの応援をしてしまったのだった。

「マサにはマサのペースがあるよね。意見押しつける感じになって本当にごめんね。許してくれる?」

 運転中のマサの横顔を、アオイは運転の邪魔にならない角度で覗き込んだ。マサの顔にはまだかすかな不満が貼り付いていたが、彼はもう怒りを言葉にすることはなかった。

「ごめん。俺も言い過ぎた。こういう話女の人としたことないからテンパったのかも。アオイに悪気がないのは分かってるから。ありがと。心配してくれて」

「マサ……」

 マサの優しい理解が、アオイにはきつかった。

 私、そんな出来た人間じゃないよ。

 たった一日。されど一日。海イベントを共にして、マサのいい所も悪い所もたくさん知った。けれど、悪い所よりもいい所の方がアオイには大きく見えて、心惹かれているのはたしか。どうせ誰もいない家に帰るより、こうしてマサと過ごしていた方が何倍も楽しい。帰り道でお礼の夕食に誘ったのも半分は口実。

 今日バイバイしたら、もうマサとはこんな風に遊べなくなるかもしれない。そう思ったら、少しでも一緒にいる時間を長引かせたいと思った。

 それから一時間ほど車を走らせ、ようやくファミレスを見つけた。遅めの夕食をすませ、再びドライブの時間に戻る頃には、さきほどのピリピリした空気は消え去り元の穏やかな二人に戻っていた。