「…ったく、本当に何やってるんですか!この女好き刑事野郎っ!!」
刑事野郎こと、国枝はさすがに言い返す言葉がないらしく、黙り込んでいた。
「晶…香恵さん起きちゃう……」
怒鳴り声をあげる晶を止める、美晴。
しかし、晶は美晴に鋭い目線を送り、さらに怒鳴った。
「あんたもあんたでしょっ!!」
美晴はびくっと体を反応させ、罰の悪そうな顔をした。
晶の怒りは当分納まりそうにない。
殺人を止められなかった自分の腑甲斐なさへの怒りも含まれているが…。
ソファーには気を失った香恵が眠っていた。
ショックが酷かったのだろう。
目の前で、肉親が死んだのだから。
香恵のように、身内の不幸で気を失う人がいるのは珍しいことではない。
血のつながりがあるから、とかではなく、自分に近い存在が消えてしまった、ということを人は受け入れたがらない。
現に、晶自身も経験があった。
身内じゃない。
気絶したわけじゃない。
ただ現実を受け入れられなかった。
今もそれを引きずってないといったら嘘になる。
だからこそ、晶は眠る香恵の気持ちが分かる気がした。


