怪しまれないよう、飲み物を片手に政人を見た。


どこにでもいそうなおじさん……とは少し違う。

なんとなく、気品を感じる。
同時に威厳や責任感なども漂わせていた。


政治家はこういう人なのか…


頭に浮かんでくるのは、父親の姿。

仕事中と非番の日の激しいギャップ。

てきぱきと部下に指示を出し、時には自ら事件解決のために行動する。

しかし、家では寝てばかりのぐうたらオヤジ。


いったい大人って…と思わず言いたくなる。




「そんなことありません!」




突然知也の声が響いた。

いきなり耳に入ってきた言葉に驚く。


知也は政人を強い瞳で見ながら、必死にしゃべった。


「香恵さんを思う気持ちに嘘はありません。
父なんか関係ない。
僕は本当に香恵さんを愛しています」

「簡単に愛してるなどと口にしないほうがいい。
軽い口説き文句に聞こえる」


冷たく言い放つ。

ぎゅっと結ばれた知也の唇。

その表情は本当に悔しそうだった。


香恵がどうしていいか分からない様子で、政人を見た。


「香恵、私にスープと飲み物を」