南城政人は憤慨していた。
アンティークの赤いソファーに座ると、テーブルの上にあるタバコを吸い始めた。
ふぅーっと息を吐きだす。
煙がふわっと広がり、特有の鼻に残る薫りを残して消えた。

――少し落ち着こう

そう思いテレビをつけた。

大画面にお笑い番組が映る。
今流行の芸人がなにやらバカなことを言って笑いをとっている。

――くだらない

そう思い、チャンネルを変えるが、どこも今の政人からしてみればどれもくだらないものだった。

イライラとテレビを消すと、その思いをぶつけるかのように吸い殻を灰皿に押し付けた。



「お父様…」

ドアの隙間から一人の女性が顔をのぞかせた。

「なんだ、香恵」

「お父様、何もあそこまで知也さんに言わなくても…」

「うるさい!!」

政人は怒鳴った。
香恵が身をぶるっと震えさせる。

「お前は…自分が何をしているかわかっているのか?」

「知也さんは…悪い人じゃないわ。いつも私のことを第一に考えて…」

「だからなんだ?」

政人は立ち上がり香恵を睨み付けた。その恐ろしさに香恵は目を背ける。