「箟聞いて!手塚先輩も青組だって!」

Rainを交換してから、毎日ではないがなんとか会話が続いている。
手塚先輩はあまりマメな方じゃないみたい。もう会話が途切れないように必死に考えるのが大変だよ!Rainだけでも繋がってたいじゃん!!
でもそんなこと考える私って乙女?!きゃー青春してます。

「あーそうなんだ。良かったね。それより実行員の話をちゃんと聞いてなさい。」

相変わらず箟は冷たい反応。
今は体育祭で行われるダンスの話し合い中。ダンスの一部、クラスで男女ペアを組んで踊る所があるみたい。
それはどの学年も同じ話なわけで、つまりは手塚先輩も私の知らない女の人と組むかもしれないって事だ。
なんで私は一年早く生まれてこなかったんだ!
あー誰だろ手塚先輩のペア。出来れば手塚先輩の相手は男の人でありますように。
クラスの男女の割合によっては同性も有り得るわけだからそれを願うしかない。

窓側の席を利用して、校庭をずっと眺めながらそんなことを考えていた。
周りを見渡せば席を立ってる人がちらほら。もうペア探しは始まっていたみたいだ。私も決めないとな、と体を横に向ければ、目の前には隣の席のたくやん。右手で頬杖しながら横目で私の事を見ていた。

「まだ決まってないのかよ。」

「皆が早いんだよ!」と笑って返せば、たくやんはつまらなそうに「ま、俺も決まってないけど。」と呟いた。
なんだたくやんも決まってないんじゃん!
呑気にそんなことを考えていれば、たくやんは「そんなに直樹先輩が気になる?」とまたつまらなそうな顔して言ってきた。

そりゃ気になるし、先輩かっこいいし、相手が気になるし。
たくやんに言うにはなにか恥ずかしくて「ま、手塚先輩かっこいいじゃん。」とそれとなく返した。

そんな私に、今度は真正面でたくやんは言った。

「アイツはやめとけ。」

思わず脳が停止する。
え、なんで?どうして?なんでたくやんがそんな事言うの?色々問い詰めると、聞こえてくる単語は「女ったらし」やら「性格が悪い。」やら。
受け止められず、その場では「えー、そうなの?」と適当に返す。

「ま、取り敢えずペアどうすんだよ。」

話を戻してきたたくやんにちょっと安心した。
てかそうだ。忘れてた。

「しょーがねぇな!余り物同士組んでやるよ!」

「はぁ?なにそれ!しょうがない!心広い私が承認してやるよ!」

笑って誤魔化して過ごしたけど、本当はたくやんが言った言葉が頭が離れなかった。