母は最初、許してくれなかった。

中庭でやるにしても、花火はさすがに危険だと言って聞く耳持たずだった。

でも私があまりにもしつこく毎晩ねる前にお経のように唱えるもんだから、母はほどなくして折れた。

看護婦長に掛け合ってくれてそれから小児科医長に許可を取り、どうにか夏祭り開催の前日に決定した。

母に最大限の感謝を伝え、玄希くんの病室に飛んでいった。

相変わらず難しそうな本を読んでいたが、その日は星座の本だった。


「そっかあ。じゃあ、僕の夢、明日にはひとつ叶うんだね」

「ひとつって一体何個あるの?」

「この前見せたの全部だよ。晴香と一緒にやりたいことは山ほどあるからね」

「その山の中に、その本の星座たちのこともあるの?」


玄希くんは「もちろん!」と目を輝かせながら、私に星座図鑑を見せつけた。

そこには、天の川やみずがめ座、双子座など普通の小学生でも知っている星座の名前とその伝説や銀河系、月、太陽、惑星、私達が知らない星座のことなど、膨大な宇宙を凝縮した様々な事柄が載っていた。


「宇宙はずーっとどこまでも続いているからね。空を見上げていたら、お父さんともずーっと繋がれる気がするんだ」


お父さんのこと、好きなんだな…。


私は玄希くんに言った。


「お父さんも明日見上げていると良いね」


玄希くんは涙を目に溜めながら、必死に笑顔を作っていた。



玄希くんの思い、お父さんに届きますように…。



私はそっと心の中で願った。