午後6時。

図書館の閉館を知らせるアナウンスが流れ出した。

机に突っ伏し、1日の半分は寝ていて今も夢の中にいる彼を叩き起こす。


「ウワッ!びっくりしたあ…。なあんだ、アオハルか」

「早く起きて。もう帰る時間だから」

「マジか!?やっべえ、ぜんっぜん、やってねー!」


急いで参考書類をカバンに詰め込み、分厚いコートに身を包む。

手袋にマフラーも身につけ、今年も寒さ対策はバッチリだ。

受験生は風邪もインフルエンザも大敵。

かかってしまったら、受験することさえ困難になるかもしれない。

そう考えたら身震いした。



カバンを背負い、宙太くんより先に退出しようとすると、宙太くんが呼び止めた。


「アオハル、忘れもの」


宙太くんは、ピンクのブランケットを差し出した。

私の忘れ物と言うよりは、あの日誰かが私にかけてくれて、それから忘れられてしまった物だ。


「あっ…ごめん。ありがと」


ブランケットは私の体温でほんのりあったかかった。