HARUKA~愛~

「げんきぃ、早く来て~」


彼女はいつもランダムに女子たちと食べている。

だいたいは吹部の人だったり、クラスのイケイケグループに混ざったり、たまに私だったりするけれど、今日は違う。

まるで誰にも取られないよう、飼い犬をリードで繋いでいるかのようだ。


そして、私を睨んで来る。

明らかに、分かりやすく睨んで来る。


また厄介なことになってしまった。

しかも今回は完全に私が悪い。

1度離れたキョリを最初に埋めようとしたのは私だ。


なぜそうしたのか、今の私にはわからない。

ただ、なんとなく、あの時は寂しかった。

つらかった。

自分が捨てられたように感じた。


だから、繋ぎ止めたんだ。

自分の意志で…。




私はじっとその様子を見ていた。

ヤツは嫌そうな顔も嬉しそうな顔もしていない。
いつも通り、誰も傷つけないように、にこにこ笑っている。


その裏の涙を私は知ってしまった。


夏の夜、あいつは泣いていた。

普段絶対泣かないヤツが泣いていた。


思い出したら胸が苦しくなった。

呼吸が乱れそうになって慌てて教室を飛び出した。


無我夢中で廊下を駆け抜けた。

何人もの人とぶつかり、睨まれた。


でも走った。

感情を振り払うように、手を大きく振り、足を早く回転させた。








分からない。



分からない。



私は…



私は…



私が…













分からない。













急に頭が痛くなって私は倒れた。

ズキズキと、割れるように痛い。













「晴香…」













誰?













ねえ、誰なの?













あなたは…













誰?













「ハル、大丈夫か!?しっかりしろ!」

「…はる…か…」













「晴香!!晴香!!晴香!!」














痛い。




痛い!




痛い!!















助けて…













私は穴の空いた記憶に蝕まれていた。