「はるちゃん、ここ雑ぅ。直して」

「いやいや、あんたのやったとこの方がどう見てもズレてるでしょうが。私、意外と几帳面だから」

「いや、アオハルは雑だよ!遥奏の誕生日にケーキ作った時も飾り付けが均等じゃねえし、混ぜ方テキトーだし」

「うるさいなぁ…!」


ケチをつけられ、苛立ちながら筆に絵の具を付けようとすると、ピチャッと真っ白のジャージにダイブして来て、黒い水玉模様が出来た。


「アハハハ!!アオハル、ざまあ」


宙太くんが腹を抱えて笑い出す。

何度も何度も私を指差し、「ざまあ見ろ!」と大声で言って来る。

教室中に響き渡り、私の背中に視線が集中した。


さすがの私も堪忍袋の緒が切れた。


黒の絵の具を筆でグリグリと塗りつけ、水を付けて飛ばしてやった。


「おい、なにすんだよ!?」

「私のこと笑ってるのが悪いんでしょうが!」

「だからってこんなことしていいのか!?遥奏に言いつけてやる!!」


宙太くんも負けじと応戦して来る。

綺麗に洗って白さを保っていた私のジャージは、あっという間に芸術作品へと生まれ変わった。


「2人共、止めなよぉ」


呑気に仲介に入って来たかのように思ったが、ヤツも参戦。

ヤツは使い終わり、教室の隅で大人しくしていたペンキを持ち出して来た。


「すきありっ!」


ヤツの行動に気を取られているうちに宙太くんから追加攻撃を加えられ、背中に青い線が1本出来た。


「いい加減にして!!」


そう叫んだ、その時だった。













「晴香…」













誰かが私の名前を呼んだ…













「は~るちゃん」








ベチャッ。






頬にピンク色のペンキがついた。


ヤツはしたり顔でこちらを見つめてくる。










「ああ、もう…!!」


立ち上がり、上からペンキをぶっかけようとした、次の瞬間。


「うわぁ!」














ガッシャーン!!













ピンク色に染まったのはヤツだった。