遠巻きに成り行きを見守っていたクラスメイト達も、初めて聞く凛子の大声に目を丸める。

「え、杉原さんてあんな声出んの!」
「そもそも授業でしか喋ってんの聞いた事ない」
「よく美麗と話してるけど、杉原さんの声小さくて美麗1人で喋ってるみたいに見えるし…」
「てかかっきから煌生先輩と何喋ってんのか気になるー」

そして肝心の煌生はと言うと。

「りん、ごちゃん…?」

誰よりも驚いた顔で、3メートル程離れた凛子を振り返る。真っ赤な顔でこちらを見つめる彼女に、初めて会った時に芽生えた気持ちが、ぐっと大きくなるのを感じる。

「穂高先輩、どうも、ありがとうございましたっ…!」

あの時と同じ言葉で、また、目の前で頭を下げるきみ。

「…明日のホームルーム終わったら、さ」

林檎みたいなその頬に、愛しさがこみ上げる。

「迎えに来るね?」

そう言って嬉しそうに廊下を去って行く彼を、凛子は火照る顔でただぼうっと見つめていた。
背中を向けた彼の呟きは、勿論聞こえない。

「やば、可愛過ぎて調子乗った、最後」

その微かに赤く染まる頬にも、勿論気付かないのであった。