煌生は、凛子にとって世界を変えた救世主、ともすれば神様のような存在だった。自分とは住む世界が違う人。博愛に満ちて、はみ出し者にも救いの手を差し伸べる崇高な心を持った・・・・。
「そんなはず、ないのに」
彼は自分と同じ普通の高校生で、笑う事もあれば声を荒げ怒る事もある。苦手なものもあるし嫌いな人もきっといる。
そんな普通の男の子だと、彼と触れ合う日々の中で徐々に知っていった筈なのに。それでも自分の空想の姿を押し付け続けた。
先輩は普通の男子とは違う。私を笑うあの子達とは違う生き物だ、と。
そう、思いたかった自分勝手が、先輩の顔をした神様を造った。
熱い瞳が、触れた唇が、彼の欲望を如実に伝えるたび、頭の中のその偶像が壊れそうで怖かったのだ。
だから昨日、目の前の彼を受け入れる事が出来ず逃げ出した。
『好きだから、君の事』
神様はそんな普通の高校生みたいな事を言わない。それも何故、顔もスタイルも良くない更には頭も悪いし人とまともに話せない凡人以下の自分を・・。
「さ、流石に・・それは、自虐的過ぎる・・」
「さっきからブツブツ言ってどうした?」
「あっ、いや、何でも!」
「そう?今日は勉強どこでやろうか。図書室行く?」
放課後の騒がしい教室、鞄を持って席を立ちながら美麗が問う。
図書室、と聞いて昨日の光景が浮かぶ。急くようにこちらを見つめる瞳が過ぎり、撫でられた手の甲が感触を思い出そうとする。
「き、今日は、駅前の図書館に行かない?」
人も少ないし、ともっともらしい理由を付け加えると、何かを察するように親友も笑って頷いた。
「オッケー。じゃあほら、行こ。鞄持って」
「杉原さーん」
促されて立ち上がった所を呼び止められ、反射的にぱっと後ろの扉を振り返った。
わかっている、いる筈がない。
そこにいたのは一冊のノートを翳すクラスの男子。それを恐る恐る受け取る。
シンプルなノートの表紙には、【テスト対策 数学】の文字。
「そんなはず、ないのに」
彼は自分と同じ普通の高校生で、笑う事もあれば声を荒げ怒る事もある。苦手なものもあるし嫌いな人もきっといる。
そんな普通の男の子だと、彼と触れ合う日々の中で徐々に知っていった筈なのに。それでも自分の空想の姿を押し付け続けた。
先輩は普通の男子とは違う。私を笑うあの子達とは違う生き物だ、と。
そう、思いたかった自分勝手が、先輩の顔をした神様を造った。
熱い瞳が、触れた唇が、彼の欲望を如実に伝えるたび、頭の中のその偶像が壊れそうで怖かったのだ。
だから昨日、目の前の彼を受け入れる事が出来ず逃げ出した。
『好きだから、君の事』
神様はそんな普通の高校生みたいな事を言わない。それも何故、顔もスタイルも良くない更には頭も悪いし人とまともに話せない凡人以下の自分を・・。
「さ、流石に・・それは、自虐的過ぎる・・」
「さっきからブツブツ言ってどうした?」
「あっ、いや、何でも!」
「そう?今日は勉強どこでやろうか。図書室行く?」
放課後の騒がしい教室、鞄を持って席を立ちながら美麗が問う。
図書室、と聞いて昨日の光景が浮かぶ。急くようにこちらを見つめる瞳が過ぎり、撫でられた手の甲が感触を思い出そうとする。
「き、今日は、駅前の図書館に行かない?」
人も少ないし、ともっともらしい理由を付け加えると、何かを察するように親友も笑って頷いた。
「オッケー。じゃあほら、行こ。鞄持って」
「杉原さーん」
促されて立ち上がった所を呼び止められ、反射的にぱっと後ろの扉を振り返った。
わかっている、いる筈がない。
そこにいたのは一冊のノートを翳すクラスの男子。それを恐る恐る受け取る。
シンプルなノートの表紙には、【テスト対策 数学】の文字。
