そう呟く表情は、もどかしげに眉を寄せていて。頬は凛子から伝染したかのようにほんのり赤い。
「っ!先、輩・・」
机の下にあった左手が、いつの間にか別の体温に包まれている事に凛子は驚き、その犯人に間違いない目の前の人物に、弱々しくも非難の視線を送る。
「は、離してくださ」
「嫌だ。言ったでしょ?俺の事好きにさせるって」
「そっ、れとこれは」
「違わないよ。だって今りんごちゃん、俺にドキドキしてるよね?それなのに、そこ付け込まないとか出来ない」
言って、ぎゅっと握られる小さな手。
―白い。すべすべしてる。
「っ!」
真っ白な手の甲を親指が撫でる。それに反応するようにぴくりと震えた彼女。煌生の喉が大きく上下する。
「本当は、その真っ赤なほっぺに触れたいけど、我慢してるんだよ・・」
嘘だ。本当に触れたい所は、そんなの彼女には到底言えない。
そこに触れたらどうなるだろう。触れた所から真っ赤になってゆく愛しい姿を想像したところで、頭に鈍い痛みが走った。はしたない妄想が霧散してゆく。
「何してるんですか!」
「え、あ…」
「もう!肩が!触れてるじゃないですか!」
どうやら彼女が咎めているのは、先程より更に近付いた距離の事で、机の下で繋いだ手は見えていないようだった。
分厚い辞書を抱えて背中越しにこちらを睨んでいる。まさかとは思うが、あれで殴られたのだろうか。いや、確かにそうされても文句は言えないのだが。
「ごめん…」
それは怒りを露わにする美麗に言ったのか、下を向いて何も発さない凛子に向けたものか。
するりと手の拘束を解くと、瞬時にそれを引っ込められた。
―やばい、それダメージかなりくらうやつ。
心にぐさりときたが、自業自得なので仕方ない。
美麗に叩かれていなかったら、ちょっと大変だった。何が、とは言えない。とにかく大変な事になっていた。批判を恐れず正確に言うなら、【なりかけていた】。
「本当にごめん、りんごちゃん」
今度は間違いなく凛子へと向けた謝罪の言葉を口にする。
当の彼女は、下を向いたまま、その表情は見えない。真っ赤な耳が、煌生を責めているようだ。
彼女を俯かせたい訳じゃない。怖がらせたい訳じゃない。こっちを向いて、笑って欲しいだけなのに。
煌生が困ったような顔で笑う。
「今日はもう充分やったし、帰ろう」
その様子に、美麗もただ頷くだけだった。
「っ!先、輩・・」
机の下にあった左手が、いつの間にか別の体温に包まれている事に凛子は驚き、その犯人に間違いない目の前の人物に、弱々しくも非難の視線を送る。
「は、離してくださ」
「嫌だ。言ったでしょ?俺の事好きにさせるって」
「そっ、れとこれは」
「違わないよ。だって今りんごちゃん、俺にドキドキしてるよね?それなのに、そこ付け込まないとか出来ない」
言って、ぎゅっと握られる小さな手。
―白い。すべすべしてる。
「っ!」
真っ白な手の甲を親指が撫でる。それに反応するようにぴくりと震えた彼女。煌生の喉が大きく上下する。
「本当は、その真っ赤なほっぺに触れたいけど、我慢してるんだよ・・」
嘘だ。本当に触れたい所は、そんなの彼女には到底言えない。
そこに触れたらどうなるだろう。触れた所から真っ赤になってゆく愛しい姿を想像したところで、頭に鈍い痛みが走った。はしたない妄想が霧散してゆく。
「何してるんですか!」
「え、あ…」
「もう!肩が!触れてるじゃないですか!」
どうやら彼女が咎めているのは、先程より更に近付いた距離の事で、机の下で繋いだ手は見えていないようだった。
分厚い辞書を抱えて背中越しにこちらを睨んでいる。まさかとは思うが、あれで殴られたのだろうか。いや、確かにそうされても文句は言えないのだが。
「ごめん…」
それは怒りを露わにする美麗に言ったのか、下を向いて何も発さない凛子に向けたものか。
するりと手の拘束を解くと、瞬時にそれを引っ込められた。
―やばい、それダメージかなりくらうやつ。
心にぐさりときたが、自業自得なので仕方ない。
美麗に叩かれていなかったら、ちょっと大変だった。何が、とは言えない。とにかく大変な事になっていた。批判を恐れず正確に言うなら、【なりかけていた】。
「本当にごめん、りんごちゃん」
今度は間違いなく凛子へと向けた謝罪の言葉を口にする。
当の彼女は、下を向いたまま、その表情は見えない。真っ赤な耳が、煌生を責めているようだ。
彼女を俯かせたい訳じゃない。怖がらせたい訳じゃない。こっちを向いて、笑って欲しいだけなのに。
煌生が困ったような顔で笑う。
「今日はもう充分やったし、帰ろう」
その様子に、美麗もただ頷くだけだった。
