矢継ぎ早にかけられる言葉に、声が上手く口から出てこない。
代わりにどんどん熱を帯びる頬を、隠したくても体が動かない。

「やべーめっちゃ真っ赤になっちゃったけど!」
「っちょ、やめろ」

制止する煌生の声が笑い声に掻き消される。

「えーなになにもしかして、キミ煌生の事好きなの?」
「ありゃ、まじー!」

ほっぺが熱くてジンジン痛い。

「ち、ちが・・・」

痛いです、先輩。

「やめろっつってんだろ!」
「先輩・・・」

初めて煌生が大声を出すのを見た凛子は、呆然とその横顔を眺める。
眉間にシワを寄せようとも均衡の崩れない綺麗な顔が、誰の目にも明らかな怒りを露にしていた。

「え、こう、き…?」

流石に隣にへばりつくようにしていた彼女も、やんわりと距離を取る。
凍りつく空気を壊すように、煌生がにこやかな笑顔を見せるが、その目は笑ってなどいない。

「さ、皆もう帰るんでしょ?俺も掃除しなきゃだから」

有無を言わさぬ冷たい表情で友人達を見渡す。
凛子だけではない。彼らも煌生のこんな目を見るのは初めてだった。

「そ、だな。邪魔してごめん」
「か、帰ろっか」
「うん…。じゃあね煌生」

そして触らぬ神に祟なしとでも言うようにそそくさと去っていく。

残された2人の間に何とも言えない空気が流れる。
それを破ったのは。

「ごめんなさい…」

凛子の謝罪だった。

「…何でりんごちゃんが謝るんだよ」
「わた、私のせいで」

友達にあんな顔を向けさせてしまった。いつも穏やかな彼に。
それが凛子にひどく罪悪感を覚えさせた。

「私がいつまで経ってもこんなだから」

未だ熱を持つ頬を、ぎゅうっと押さえる。