そう言ってぺたりと湿布を貼ると、立ち上がりこちらに背を向けて足早に歩き出す。
凛子はその背中を呼び止めて、さっきからずっと気になっていた事を問う。
「佐々木君!さっき私の名前呼んでくれたよね!?」
「!」
凛子の言葉に彼の歩みがぴたりと止まる。
さっき、女子生徒とぶつかる寸前、誰かに名前を呼ばれた。
「あれ、佐々木君、だよね?」
「っ」
彼の顔がぼわっと赤くなって、それを肯定する。
「声、かけてくれて、助けようとしてくれて、ありがとう」
「……どーいたしマシテ」
―私は今まで他人との関わりを怖がるばっかりで、こうした人の優しさを見逃してきたのかも知れない。世の中には悪意ばかりが溢れている訳じゃないと、あの人が教えてくれた。
もっと周りと向き合える自分になれたら、また笑いかけてくれるだろうか。わからないけれど、今自分に出来る事はそれくらいしかない。少しでも強く、なりたい。
「あの、さ、佐々木君」
「何?」
「いい、い一緒にフォークダンス、おど踊りませんかっ…?」
「!?」
微かに聴こえる音楽に満天の星空。その下に真っ赤に頬を染める男女が2人。
かの【特訓】は煌生の予期せぬ成果をもたらしていた。
そして本人はそんな事とは露知らず、真っ暗闇の校舎の中、愛しい女の子へと想いを馳せるのだった。
「りんごちゃん…今何してるかな?早く会いたいよぅ。何であんな事言っちゃったんだろう…」
「煌生ー?何ブツブツ言ってんだよ」
「うわぁぁ!」
「な、何」
「いきなり肩叩かないでよびっくりしたじゃん!」
「いや、どっちかというとびっくりしたの俺」
「早く音楽室の中にあるスタンプ押してきて!」
「お前のビビり隠すために、何で俺がペアになんなきゃいけないんだよ。他は皆男女ペアなのに・・・」
「いいから早く」
「ったく、そんなんじゃ学園の王子の名が泣くぞー」
そう言って音楽室の中へと入っていった友人。その背中に届かない呟きを零す。
「俺はりんごちゃんの王子様になれればそれでいいんだよ」
そして2人が再会する一週間後、初恋を拗らせる王子様の想いが遂に事件を引き起こすのだった。
凛子はその背中を呼び止めて、さっきからずっと気になっていた事を問う。
「佐々木君!さっき私の名前呼んでくれたよね!?」
「!」
凛子の言葉に彼の歩みがぴたりと止まる。
さっき、女子生徒とぶつかる寸前、誰かに名前を呼ばれた。
「あれ、佐々木君、だよね?」
「っ」
彼の顔がぼわっと赤くなって、それを肯定する。
「声、かけてくれて、助けようとしてくれて、ありがとう」
「……どーいたしマシテ」
―私は今まで他人との関わりを怖がるばっかりで、こうした人の優しさを見逃してきたのかも知れない。世の中には悪意ばかりが溢れている訳じゃないと、あの人が教えてくれた。
もっと周りと向き合える自分になれたら、また笑いかけてくれるだろうか。わからないけれど、今自分に出来る事はそれくらいしかない。少しでも強く、なりたい。
「あの、さ、佐々木君」
「何?」
「いい、い一緒にフォークダンス、おど踊りませんかっ…?」
「!?」
微かに聴こえる音楽に満天の星空。その下に真っ赤に頬を染める男女が2人。
かの【特訓】は煌生の予期せぬ成果をもたらしていた。
そして本人はそんな事とは露知らず、真っ暗闇の校舎の中、愛しい女の子へと想いを馳せるのだった。
「りんごちゃん…今何してるかな?早く会いたいよぅ。何であんな事言っちゃったんだろう…」
「煌生ー?何ブツブツ言ってんだよ」
「うわぁぁ!」
「な、何」
「いきなり肩叩かないでよびっくりしたじゃん!」
「いや、どっちかというとびっくりしたの俺」
「早く音楽室の中にあるスタンプ押してきて!」
「お前のビビり隠すために、何で俺がペアになんなきゃいけないんだよ。他は皆男女ペアなのに・・・」
「いいから早く」
「ったく、そんなんじゃ学園の王子の名が泣くぞー」
そう言って音楽室の中へと入っていった友人。その背中に届かない呟きを零す。
「俺はりんごちゃんの王子様になれればそれでいいんだよ」
そして2人が再会する一週間後、初恋を拗らせる王子様の想いが遂に事件を引き起こすのだった。
