「どうかした?」

「……樹、何だか積極的だなって思って」


そう言った途端、樹が私の手を握る力は更に強くなった。


「そりゃあ、今度こそ佳奈に逃げられないように必死だよ」

「に、逃げないよ!」


前科があるとは言え、あらぬ疑いをかけられては困る。私は必死に否定した。


「本当は明日も会いに来たいけど、明日から仕事だしなあ。佳奈、もう帰るんだろ?」


私は頷きながら、あれ、と疑問を感じる。


「〝明日〟から? 樹、今日も仕事じゃなかった?」

「いや、今日は休み。瓶の回収を装って佳奈を迎えに来ただけ」

「え?!」


石段を降りきって車の前まで来ていたが、驚きのあまり立ち止まってしまった。樹はふふんと鼻を鳴らす。


「そうでもしないと会ってくれなかっただろ? 俺の作戦勝ち」

「……」


樹は、この強情で可愛げのない幼なじみの扱いをよく分かっているようで。
何も言い返せない私を満足そうに見て、更にこう告げたのだった。


「やっぱり、キスしていい? ーー次に会うまでなんて、我慢できない」


もう神社の外だからいいよな?って、それはそれは嬉しそうな顔をして。