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出店で買った少し割高な食べ物は、意外にも両親に好評だった。
醤油で香ばしく味付けられたイカ焼きを肴に父とビールを飲んでいると、部屋中に陽気な機械音が鳴り響く。我が家の固定電話の着信音だ。母が愛想良く電話に出ている姿を横目に、私はイカの足をつまんだ。

すぐに母が、こちらを振り返る。保留ボタンを押しているのに通話口を押さえる癖は、今も健在のようだ。


「佳奈、電話」


かけられた声に、箸でつかんだイカの足がぽろりとお皿に戻る。


「え、私に?」


帰省したことは、誰にも言っていない。一体誰からだろうと訝しんでいると、母が急かした。


「樹くんからよ。早く出なさい」

「は?!」

ーー樹? 何で?!


もしかして祭りにちゃんと来たかどうかを確認するつもりなのだろうか。今更電話なんて、一体何を話せばいいのだろう。少し酔いも回って頭が混乱している。


「もしかしてあなたたち、ヨリでも戻したの?」


にやにや笑いながら告げる母の言葉を聞いて、父が咳き込んだ。


「ちっ、違うから! 部屋で出る!」


私はコードレスの子機をつかんで、自分の部屋へと猛ダッシュした。