「この水族館、神秘的で綺麗だよね。金内くんはよく来るの?」

「…たまに。入場料もそんなに高くねぇし、人も少ないから」


確かにそうだ。都会の水族館なら帰りの電車賃がなくなっていた。
人も見ての通り少なくて、落ち着ける。人と話したくない時なんかに最適で──────
……………………あれ、もしかして。

「ご、ごめん金内くん。話しかけたりなんかして」

この水族館に来たということは、金内くんは一人になりたいんだ。
ちくしょう、私ってなんて空気が読めないんだ。
気を抜きすぎた。ごめん、金内くん。

パッと腕時計を見ると11時。
私はかなりの時間ぼけっとしていたらしい。

今からなら四限には間に合う。
私服で来てしまったから、まず家に帰って、電車賃を持って…………。