「私の方が教えてほしいよ。数学はちょっと得意だけど、化学がさっぱりなんだよね」
「…別にいいぜ、俺が教えても」
「……………ホント?撤回するなら今だよ」


真面目な顔で真剣に言うと、金内くんはフッと笑う。
金内くんは案外表情が豊かなのかもしれない。

「撤回なんかしねーよ。不安なら連絡先でも交換するか?」
「いっ、いいの?」


あまり人とつるまない金内くんに、まさかそんなことを言ってもらえるなんて。
恩返しに張り切って数学を教えよう。


「数学なんか口実なんだよ、元々交換したくて…………」

ぶつくさと何かを呟く金内くんをよそに、急いでスマホの電源を入れて操作する。