「でも、金内くん。一人になりたいでしょ?」

誰とも話したくない時は、誰にでもある。現に私はここに来る前はそうだった。

水族館を回っているうちにそんな気持ちは消えたから、金内くんにも早く一人になって、その気持ちを消してもらいたい。私のささやかな気遣いだ。


「…いや、別に友澤がいてもいいけど」
「へ?そうなの?」

金内くんがしかめっ面から不思議そうな顔になる。
初めてしかめっ面と不機嫌顔以外を見たかもしれない。

金内くんが一人になりたいわけじゃないなら、私は去る理由がなくなった。
さっきまで金内くんによって掴まれていた腕はパッと離されたので、大人しく椅子に戻る。