「その…支社長が15歳の時に食べたって言うお店のオムライスがどんなのだったかなと思いまして」

考えていたことを隠すために、自分から話題を提供した。

「ああ、実のことを言うと覚えていないんだ」

支社長が言った。

「えっ?

お店の名前とか、場所はどこだったかも覚えていないんですか?」

思わず聞き返したわたしに、
「おじさんの行きつけの店の1つだったと言うことは確かなんだ。

そこでオムライスが美味しかったことは覚えてる…けど、連れて行ってもらったのが1度きりだったから」

支社長が言った。

「そうですか…」

わたしは返事をすると、オムライスを口に入れた。

「食べたかったのか?」

そう聞いてきた支社長に、
「…同業者ですから」

わたしは答えた。