支社長の顔が紅いのは、わたしの気のせいじゃないと思う。

「凱さん、顔を見せてくださいよ」

顔を覗き込もうとするわたしに、
「だから、見るなって言ってるだろ」

支社長は逃げるようにして、わたしから目をそらそうとした。

「それは無理ですよ、こんなにも近くにいるんですから」

支社長の頬に両手を添えて、その顔をわたしの方へ向かせた。

「――おい…」

わたしと目があったとたん、支社長の顔の紅さが増したような気がした。

「凱さん」

わたしが名前を呼んだら、
「こうなったら、まひるが全部責任を取れ」

支社長が言った。

「えっ?」

何の話をしているんですか?

そう聞こうとしたら、
「――ッ…」

わたしの唇と支社長の唇が重なっていた。