支社長は取り扱い要注意！

「――支社長は、バカですよ…」

震える声で呟くように、わたしは言った。

「わたしのために何もかも全てを捨てるなんて、わたしが必要だなんて…」

次から次へとこぼれ落ちる涙に邪魔されて、それ以上を言うことができない。

頬を伝っている涙をぬぐうと、
「――本当に、わたしでいいんですか…？」

支社長に聞いた。

「お前だからいいんだよ。

俺はずっと前から、それこそ出会う前から高畑まひるに恋をしていたんだから」

支社長は微笑みながら言った。

クシャッとなった目元に、わたしの心臓がドキッ…と鳴った。

ああ、わたしは本当にこの人のことが好きなんだ。

この人がわたしが恋をした人なんだ。

「返事を聞かせてくれ、高畑まひる」

そう言った支社長をわたしはずるいと思った。