メガネのフレームをくっと上げて、もう一度左側に目線をちらり。


江口は、真っ赤になった顔をパタパタあおいでいて、視線には気づかない。


やっぱり、可愛い。


自分が無表情だとか、何を考えているかわからないとか、そんな風に言われているのは知ってる。


それで、いい。


無表情でいるのは、抑えていないと江口のせいでゆるゆるになってしまうから、だとか。


頭の中はいつも江口のことでいっぱいだ、とか。


そんな恥ずかしいことを知られたくなんかない。



いつか、気持ちを伝えられる時まで。



1時限目、現代文。


黒縁メガネを、くい。