赤い糸

 人は死ぬ間ぎわ、走馬灯のように自分の人生をかえり見るという。

 美智子はまさに今、自分が主人公の映画を見ていた。



 生あたたかい真っ暗な母の体内をぬけ、光の中へ強い衝撃とともに飛びした。

 自分と母を繋ぐへその緒と、そして左指の小指に赤い糸が繋がっていた。

 母へと繋がるへその緒はすぐに断ち切られたが、赤い糸はどこまでも伸び、果てしなく先は見えなかった。



 庭に霜がおりる朝、母が目を離したすきに、美智子はストーブにかけていたヤカンをひっくり返し、太ももの内側に大やけどをした。

 生涯残るひきつったやけどの跡を母はずっと悔やんでいた。

 ハイハイをしながら美智子が追いかけたのは赤い糸だった。