赤い糸

 「大変です!708号室の患者さんが!」

 看護師たちのあわてる声とバタバタと廊下をかける足音が深夜の病棟にひびいた。

 年老いた夫は何をすることができるわけでもなく、病室のすみでただ死に逝く妻を見守ることしかできない。


 「美智子…」


  しゃがれた声で届きもしないのに妻の名前をよび続けた。