赤い糸

 大学を卒業した美智子は就職活動をはじめた。
 
 第一希望の会社の面接の当日、美智子は電車に乗り遅れた。
 満員電車の閉まる扉ギリギリで。
 美智子の赤い糸がぐいぐいと美智子の体をうしろへと引っぱっていた。

 次に乗った電車のどこかの車両で緊急停止ボタンが押され、けっきょく美智子は四十分おくれて面接会場へとむかった。

 半分やけになっていた美智子は途中の自動販売機で飲みものを買った。
 二種類あるコーヒーのうち、いつもは飲まない無糖のブラックコーヒーを選んだ。

 赤い糸はそのコーヒーの前でぐるぐると輪を描いていた。

 面接に四十分も遅れたのにかかわらず、美智子は採用された。
 たまたま自動販売機で買って飲んだコーヒーがその会社の新製品で、美智子はスラスラとコーヒーの特徴や良さ、改善点などが説明できたのだ。
 開き直っていたせいもあって自分でも驚くほど饒舌だった。