美智子は自分の手をにぎる青い血管の浮きでた手を見つめた。
 いつの間にか彼は寝てしまったようだ。

 丸イスにひとり座ったまま眠る50年連れそった夫。

 病室の窓から5月の風が吹きこみ白いカーテンと彼の額にかかる白髪をゆらした。
 自分の看病疲れでどちらが患者か分からないような顔色の悪い夫。

 美智子はその閉じられた目をしばらく眺め、入院してからすっかり見あきてしまった白い天井へと視線をうつした。