「こんな感じでお願いしたいんだけど……」


男子学生が気軽に買えるような服、シンプルからロック系まで様々なジャンル、黒とか紫を基調、と走り書きで書かれてる紙をもらう。


「黒とか紫」

「そう。理想は黒なんだけど」

「その二色だけ?」

「あー……店の一角にポップな明るい感じを入れてもいいかなあ」


ほら、夢みたいな服も僕、好きだしね、と付け加える。

「じゃあコーデ考えてみるね」

「うん、ありがとう」


モデルさんの顔写真も渡してくれた。

望くんより彫りが深くて、頬骨がシュッとしてる。

中性的な顔の望くんとは対照的だ。


「このモデルさんね、店長の知り合いなんだけど。かっこいいよねー」

「……望くんもかっこいいよ」


勇気を出して振り絞る。

望くんはしばらく黙って、小さくありがとうと言ってくれた。


「僕とは全く違う顔してるよね」


望くんに着てほしいコーデを考えるのは秒なのに、このモデルさんは想像しにくい。


「楽しみにしてるね」

「うん」


頭に何も浮かんでないのに返事をしてしまう。

望くんの笑顔を見てると何でもできそうな気分になる。