一週間後、望くんから電話が入った。

内容はモデルが見つかった、ということだった。

私は暗い気持ちを吹き飛ばすためにカラフルな服装にした。

ビビットピンクのスウェットにジーンズ生地の青のオーバーオール。

足は黒のハイカットで、ポニーテールにして、ニコちゃんマークがついてるヘアゴムで結った。


「あら、今日休日よ?お出かけ?」

「急な仕事」


ほんとうは月曜に来てねって言われたけど、早く仕事に取り掛からないと心を置き去りにしてしまうような気がして、無理言って休日にしてもらった。


「あら、大変ね。いってらっしゃい」

「うん、ありがとう」


前髪を風が弄ぶ。

揺れる毛先からは爽やかな香り。

望くんのお店で売られてる香水とは違う匂い。

それでも同じ種類の香りに、鼻が異常に反応する。

ああ、この香水は失敗だったな、なんて。

たとえ夢が叶わないとしても、望くんのことは忘れられない。