「あ、来た」

「おはようございます……?」


オフィスに着くと、先輩が慌ただしくオフィス内を駆け回っていた。

その中で私を見つける。


「何かありましたっけ?」

「発表会。あんた不参加になった」

「……え?」


何かが崩れていく音がした。

でも先輩は放心状態の私の肩を叩いて、良かったじゃん、と言った。


「依頼、来たんだから」

「……依頼?」

「そう、あんたに。指名で」

「えっ……誰からですか?」


先輩がどんっと力強く背中を叩いてくる。


「望くん」


崩れた心の積み木が、一気に再生していく様子が浮かんだ。


「……ほんとに?」


タメ語になってしまったことを気にかける余裕なんてなかった。

また望くんと仕事ができる。

それだけで、空でも飛べそうだった。