望くん。

と、私の心が名前を呼ぶ。


「夢の将来の夢はモデルじゃないんで」

「そうじゃなくてもさ、今回だけ」

「夢は。本気なんで」


望くんになにがわかるの。

叫んで、泣いて、八つ当たりしてやりたかった。


「あ、あと」


塚原さんが横で笑ってる。


「夢の可愛さ知ってんの、俺だけがいいんで見なかった振りしてもらってもいいですか」


胸が痛い。

目も痛い。

望くんを映す、瞳が痛い。


「そういうことなので。本日はありがとうございました。また後日、データが送られてきましたらご連絡させていただきます」


お辞儀をしてスタジオを出ていく塚原さんに、望くんもついていく。

私はしばらく動けなくて、戻ってきた塚原さんに連れていってもらった。

控え室に戻って、一言望くんにかけようと思っていたけど、それはできなくなってしまった。

胸を抑えながら、帰宅ラッシュで満員の電車に揺られた。