「あ、いえ……」

「そうですか。それは安心しました」

目を細めて優しく笑う男性は、「D.M」のドアを引いた。


「ぜひ、よかったら見ていかれます?」

「……え?」

「あ、僕、ここの店員やってます、アズマと言います」

「アズマ」

「はい。東と書いてアズマです」


いい名前ですね、なんて口から出てきそうになって急いで口を抑える。

東さんはドアを引いてくれたまま、挙動不審な動きをとる私を不思議そうに見ている。

今更ながら恥ずかしいという感情が湧いてきて、顔が赤くなるのがわかった。

「あ、あの!」

「はい?」

「いつもこんな遅くまで、やってるんですか?」

ドアを閉めた東さんが、また優しく笑った。