Hope Your Dream

私は仕返ししたくなって、体を回転させてドアの方へ行く。

夢さん、って、腕を掴んでほしい。

スニーカーのぱこぱこって音だけが、耳に入る。


「……夢さん」


腕を掴んでほしい。

それで満足だったのに。
「あ、東さん?」
抱きしめてほしいなんて言ってないのに。


ずるい。

やっぱりずるいよ。


「ほんとは、帰りたくないくせに」


はっ、と顔を上げる。

思ったりよりも近くて、すぐに下を向いた。


「さっき、ばっちり聞いたもんね。帰りたくない、って」

「あ……」

「……望」

「え?」

「僕の名前」


望、さん。

ぴったりだと思った。

彼のために、うまれた言葉みたい。


「……望さん」

「んー……違う!」

「ええっ?」


イントネーションが違うのだろうか。それじゃ慣れるのには時間がかかるな……。

私はオロオロし始める。


「あは、そんなに慌てないで。さん、じゃなくて、くん、は?」

「くん?」

「望くん。ね、呼んでみて」

「……望、くん」

「……うん!それがいいな」

「あ、でも……望、くんは私のことさん付け、ですよね」


やったっ、と心の中で喜ぶ。

これで少しは仕返しができたかも。