パチパチパチ…

手を叩く乾いた音が体育館に響く。
俺は一礼して後ろに下がる。


それにしても驚いたな、
まさか陸上推薦トップが新入生代表挨拶をやるなんてな。
それだけここは陸上にマジって事か。




じゃああいつが話していたのは新入生代表挨拶は俺がやるって事かよ。
うわー、まじで最悪だ…。
アイツこれぜってぇ見てるよなぁ…、めんどくせー事になったわホントまじでさ。

頼むから俺は誰とも関わりたくねーんだから関わってこようとすんなよ…。





校長の長ったるい話もようやく終わり、各自で戻る事になり、生憎誰とも関わりのねー俺は1人で早々と体育館を出る事にした。



重い扉を開け、渡り廊下を歩いて丁度校舎の中に入る所でふと右を見た。
本当に何か思った訳でもなく、自然とそちらを向いた。


そこには…

今朝、職員室で見かけたあいつが中庭にあるベンチに膝を抱え込むような形で膝に顔をうずめていた。

そりゃそーだよな…、
中学とかでも多分頭良かっただろーし、新入生代表挨拶出来なきゃ落ち込んだりもするんだろーな。
まぁ、俺には縁遠い話だけどな。



自分で自虐するのも辛くなってきて彼女から顔を背け前を向いて歩き出そうとした。

だが、あいつがいた方から何かが擦れるような音と、倒れ込むようなボスっという音が聞こえた為、そちらを向き直す。



あいつが座っていたベンチには、今は倒れた彼女により、座る所が見えなくなっていた。

始めはただ倒れ込んだだけと思っていたがどうも胸騒ぎがする。

「あー…、もうクソッ!!」
頭を掻き毟りながら半ばヤケクソになって彼女の方へ向かう。


近づいて見て分かるが彼女はピクリとも動いていなかった。
それを見て、あぁ俺の勘当たってんじゃんと確信した。全く勘弁してしろって…。



「おい、聞こえるか。おいって!」

少し強めに揺すっても彼女は目を開けない。
段々とパイプ椅子から下りるギシッという音まで聞こえてくる。

やべー、人来ちまう。こいつもやばそーだし仕方ねー保健室連れてくか。

そう思い、彼女の事を横抱きにし、保健室へとダッシュする。
壁にどこの教室がどこにあるか書いてあるパネルが貼ってあり、改めてここで良かったと変な所で実感した。



少しも息を切らさず保健室へ着いた事にちょっと嬉しくなりつつまだ目を覚まさない彼女の体を支える手に軽く力を込めた。

彼女が生きていると分かるのは温かい体温と上下する胸だけだった。