「なぁ?いいだろ俺でも。」


いや、よく見ろよ。めっちゃ嫌がってんだろ

あぁめんどくさい。
だがこのままにしておくのもめんどくせーしな。
担任はクソほど頼りになんねーし。

そこまで自分で結論づけ、覚悟を決める。

めんどくせー事にはなるが背に腹は変えられねぇか。

悪いな、瀬奈。
お前に彼氏ができんのはだいぶ先になりそーだぜ?

後ろにいる瀬奈の方を抱き寄せ、空いている方の手を彼女の頭の上に乗せる。

そこまでに佐伯と瀬奈は目を大きく見開き、教室からは小さな悲鳴が上がる。
チラッと彼女を見下ろせば、パチパチしながら俺を見つめ返してきた。

うーわ、覚悟してたよりもめんどくせー事になりそうだ……。

「悪いな、佐伯。こいつはもう俺のモンなんだよ。」


そう言ってやった途端、瀬奈の体は完全に固まってしまった。

あー、悪いなほんとに。
けどお前と俺の身の安全の為だ。我慢しろ。

だが自分に軽く内心で苦笑する。

どこの少女漫画だよ。


「ここまで言って邪魔するなんて野暮な事すんじゃねーぞ。よく言うだろ?人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえってな。」
「……へー、俺が聞いてたよりも案外言うじゃんか。」


うわ、まだ懲りてねぇパターンじゃねこれ。

またなんか策を、と思ったが佐伯の視線が俺達から外れ頬ずえをついて前を向く。

あまりの急な心変わりに驚くが俺達にとっては好都合だ。

すぐさま彼女の肩から手を離し、視線で座るようにと促す。
それに気付いた彼女は慌てて席に座る。
それを見届けた俺も何事も無かったように席についた。

先程までは嵐のような冷たい風が吹き荒れていたにも関わらず、佐伯が急に俺達から興味をなくした為、また平和?な雰囲気に戻る。

それを体でキャッチしたのか、担任が教卓の裏から顔を出す。

そこにいたのかよ!?

思わず心の中で全力で突っ込む。

クラスの中には少し体が動くくらいに突っ込んでいた奴もいる。

いやまぁ、その気持ちは良くわかる。

お前は一体何してんだよ。
教員歴が長いって全くのデタラメか。

そのまま体を出すのかと思いきや引っ込んだままで、俺の隣に座っている女子が小さく声をかけた。

「あの、先生…?続きを……」
「えぇっ、えっと解散!!」


彼女の問いかけを聞き、少しそこから体を覗かせたものの、結局出てくる事はなくそこから解散の号令をかけてきた。

……おいおい、こんな奴が1年担任とかトラブル回避無理じゃね?

はぁー、なんでこんなトラブルの元みたいな奴がいる所にもっと強い担任持ってこなかったんだよ!

勘弁してくれ…

そこから前に座っている彼女を見る。

いくらなんでも今年はヤバすぎる。
去年よりひでぇぞ。
おい瀬奈!お前のせいかよ。

若干八つ当たりのような気がするも、大体合っているような気もする。

マジでこの高校生活は大波乱ってやつだな。
くそ、今まで波乱はテストの時だけって決まってんのに何してくれてんだ……!