「はーはー……着いた…。」

そう息を含めながら呟き、まだぐったりとしている彼女の顔を覗き込む。

普通にこいつは軽かったしそれは気を失っていてもあまり変わらない。
だがこいつは今自分で自分の体を支えられていない。

何度自転車から落ちかけて肝を冷やした事かマジでヒヤヒヤした。

「ほんっとにこいつと会ってからビクビクする事ばっかだっての。」

悪態をつきながら自転車を置き、彼女を横抱きにする。

本当ならあまりしたくはないが今は人気も少ないし、これが1番安定する。
ったく今日はこいつがクレープ奢りだな。

そう思いながら保健室へと直行する。

保健室近くまで行った所で電気が付いているのが分かった。
普通保健医は来るのが遅いと思って若干諦めてはいたがまさか来ているとは…まあ都合はいいな。

途中で考えるのを放棄し、扉を開けようとするも生憎手が塞がっていて行儀が悪いのを承知でドアを足で蹴った。

音で気付いた保健医は一瞬体をびくっとさせた後、こちらを振り向き慌てた顔でこちらに駆け寄ってきた。

「二階堂さん!?まさか途中で倒れてたの?頭は打ったかしら?」
「いや、たまたま俺がそばに居てそのままキャッチしたんで打ってないっす。」
「そう…ありがとう、良かったわ。」


俺の答えに安心したように肩の力を抜き、俺を保健室に導いた。

瀬奈の靴を脱がせてもらい、俺も靴を脱いで上がる。

「結構進行しているようだとは聞いていたけど、まさかここまでなんて。」


不安そうに眉を顰めながら瀬奈の手を取り脈をとる。
手を離すと目だけで俺を見る。

「脈は安定しているみたいだから安心してちょうだい。この前みたいに驚いてないみたいだから話は聞いているのね?」


頷く。

それを見るとこちらに目だけでなく体全体を向け、近くにあった椅子を引き寄せ座ると俺にも近くにある椅子に腰掛けるように勧めてくる。

俺が座ったのを視界に入れ、また瀬奈の方を向きながら話し始める。

「彼女を見て分かってると思うけど、かなり危険なのよ。本来なら家から出ない方がいいかもしれないくらいよ。でもそれは彼女が拒否したわ。とても立派で、勇気のいる事だと思うし、私もそれを支えたい。
でも私はずっとはそばにいれないし、彼女もそれを望まない。他の子と同じように接して欲しいからよ。」


それはよく俺にも伝わってきていた。
だから先程のように頷いてみせる。

「この話をしたって事はこの子はあなたには心を許していると思うし、今日みたいにあなたみたいに冷静に状況判断出来る子がそばに居てくれたらすごく助かるわ
彼女はこれからもきっと意図せず眠り込んでしまう事がある。だから、」
「支える奴が必要。」


続きを繋げれば微笑んで頷くのがみえる。

「お願いされてくれる?」

フッ
「言われるまでもないです。」


はっきりと言い切って見せれば安心したように肩を下ろした。

「じゃあ、前みたいに眠り姫をよろしくね担任の先生に伝えてくるわ。」


そう言って椅子から立ち上がり保健室を出ていった。