一条の案内で近くの公園に移動する。
一条が言うにはここは住宅地からは近いが、遊具が少ない為子供からは不人気だが秘密の話をするにはうってつけなんだとか。

……秘密の話って、女かよ。いや、今どきこんな言い方女でもしねーよ。


そんなどーでもいい事を考えていると一条から口を開いた。


「あのさ、俺、分かってたんだ。」
「何が。」
「八神が俺に気を使ってくれてたって事。」
「別に、使ってねーよバァーカ。」

俺がバァーカと言った途端、一条は吹き出した。俺は驚いて思わず一条を二度見くらいしたと思う。


「俺も今分かったわ。お前ドMだったんだな。知らなかったわ。」
「いやちげーよ!お前が俺が言おうとした言葉まるっきり言うから笑ったんだって!」
「?どういう意味だよ。」


そう問えば一条はいい笑顔で笑った。
…嫌な予感しかしねーな。


「あのさ、お前気付いてないのかもしんねーけどお前が“バァーカ”っていう相手ってお前が信用できるって思ってる相手にしか言わねーんだぜ?」


は?いやいやそんな訳ねー。

心の中で即座に否定した。
いやだって、絶対に使ってるだろ。ほら、あいつら、えーっと俺と更衣室でなじりあった奴らには言わなかったっけ…?

いや、やっぱ言ってねーわ俺。

その事に気付いて固まった俺に「納得してんじゃん!」と大笑いしている一条のデカイ声が聞こえた。

こいつ、マジで腹立つな。

恨みがましく睨みつけていれば涙まで浮かんでいたようでそれを拭いながら改めて俺に向かい合ってきた。


「んでさ、さっきの話の続きになんだけど、俺さお前に頼りにされてるって思って嬉しかったんだけどさちょっと悔しかったんだ。」
「…なんで。」
「だってさ一緒に戦ってくれっじゃなくてお前らだけで逃げろっ、みたいな?なんつーか完全には頼りにされてない、なんかどっちつかずの態度にムカッときた。」


…なるほど。
そういう捉え方があるとは考えてなかったな結局、俺はこいつを悩ましてたって事かよ。

頭が漸く流れに追い付いてきて処理をし始めた。だがどうしようもなかった。
ただ頭にあったのは関係ないこいつを巻き込みたくなかった。


「別に、お前が頼りないとかそんなんじゃねーんだわ。」

そう言えば下を向いていた一条の視線がまたこちらを向くのが分かった。


「あの悪口大会の首謀格の1人が大橋だったんだよ。」
「……。」

その言葉に再び一条の視線が下を向いた。

「他の奴らだったら助けて貰おうかって考えたかもしんねー。けど、大橋は、ダメだと本能的に思ったんだ。幼馴染のお前らを傷付け合わせちゃいけねーって。」


こいつは初めてあった時からずっと正義感が強い奴だった。
だから、いくら幼馴染でも間違っているのがあちらだったとしたらきっと真っ向から対立するだろう。そんな事、させちゃいけねー。そう思ったんだ。

「馬鹿だよな、そう思うんなら最後まで話しちゃいけねーのにな。お前がしつこいから話しちまったよ。」


そう言って自嘲の笑みを浮かべる。
すると、下を向いていた一条の視線がいきなり俺の横顔に戻ってきた。

「あのさ、俺と大橋、絶交したんだ。」


は?