それからあいつらは俺が信用されねーように先手を打って、根も葉もねー噂ばっか言いふらしやがったんだ。

俺が同級生からだんだんと孤立していくのが誰が原因なのか分かった先輩達は俺がこれ以上孤立しないように、俺を守ってくれてた。

その中でも部長や副部長は熱心に首謀格の奴らと直接話をつけるって言ってくれてたがそれは俺が止めた。
無理やり抑え込んだって、今回みたいにまたいつかそれが倍になって返ってくる。
俺はそれがよく分かったんだ。


噂の内容?そうだな…。
「 ドーピングしてる」とか、「カツアゲしてた所を見た」とかあっ、そういや「カンニングしてる」ってのもあったな。


「俺はカンニングしてと50点いかねーのかよどんだけカンニング下手くそなんだよ。」
「プッ!あはは…、ん゛んっ!」
「おいこらチビ、何笑ってんだテメー。」
「いやだって!想像以上すぎるんだもん…。」

ったくどいつもこいつも見た目で決めつけやがって…。

「一条君は、話しかけてくれたの?」

やっぱその事聞かれると思った。

口に出すのも億劫で首をただ縦に振る。

「ならどうして?酷い事言われたって訳じゃないんでしょう?」

その問いには答えず空を見上げた。
それから瀬奈の瞳を見る。ムカつくくらいに透き通っていた。

「俺に関わるのはあいつには良くねーと思ったんだよ。首謀格の中には一条と仲いい奴とかもいたしな。しょうがねーんだよ。」

そう言って笑ってみせた。

その言葉を聞いた彼女があまりにも悲痛な顔をした為見ていられなくなり、顔を逸らし、前を向いた。

ふと、隣を歩く彼女の足音が聞こえなくなり隣を見ると彼女の姿は無く、慌てて止まれば少し後ろに彼女の姿はあった。


「おい。どうした?」
「琉生は、それでいいの?」
「……。」

いいわけない。
けど、あの状況をこの方法以外にどうやって抜け出せばいいのか分からなかった。

「琉生。私知ってるの。中学の時自分の気持ちを押し殺して友達を優先した。でも、その後めちゃくちゃ後悔したの。何か他に手はなかったのかなって…。今でもそう。」

彼女はそう言って薄い涙の膜が張った目で微笑んだ。

「琉生が、後悔しない道を選んで。」

…ったく、ホントかなわねーな。

そう思って思わず笑みが零れた。
そんな俺の笑顔を見て安心したのか一歩進んで隣に並ぼうとした彼女の額にデコピンを食らわせる。

「痛っ!ちょ、私励ましてあげたのに!?」
「うっせ、生意気なんだよ。」
「理不尽〜!」

そう言って頬を膨らます彼女を笑ってやる。

「ほら行こーぜ。」
「?どこに?」
「クレープ。食べに行くんだろ。」
「!うん、行く!食べに行きたい!!」